ロック『市民政府論』(1)

完訳 統治二論 (岩波文庫)
第一章 序説

政治権力とは、所有権の規制と維持のために、死刑、したがって当然それ以下のあらゆる刑罰のついた法を作る権利であり、そうしてこのような法を執行し、また外敵に対して国を防禦するために協同体の力を用いる権利であり、しかもこれらすべてはただ公共の福祉のためにのみなされるものである

p.9

第二章 自然状態について

自由:自然法の範囲内で、人々は自分の信念に基づいて、行動を決め、財産・身体を処置することができる。

平等:いっさいの権力と権限とは相互的。

自然状態は、自由だが放縦ではない。自然法の下にあるから――他人の生命・健康・自由・財産を傷つけてはならない。

この自然法の執行は各人にまかされている。各人は理性と良心に基づいて、賠償・抑止として役立つように自然法を執行する。

賠償・抑止だけが刑罰の合理的理由

自然法を犯すことによって、犯則者は、神が人間の相互的安全のために、彼らの行為に加えたところの制限である理性と一般的衡平の規則以外の、別の規則に従って生きることを自ら宣言する。このようにして人々を傷害と暴行から保護すべき紐帯は、彼によって軽侮破壊されるのであるから、彼は人類にとって危険なものとなるのである。これは、全人類および、自然法によって設けられたその平和と安全とに対する、侵害である。したがって各人は、人類全体を維持するためのその権利によって、彼らにとって有害なものを制止し、必要な場合には破壊することができる。p.14

第三章 戦争状態について

AがBを絶対権力下に置こうとする=Aは戦争状態にある。BはAに抵抗する権利を持つ。

他の者を自己の絶対権力の下におこうと試みる者は、これによって自分自身を、その者との戦争状態におくのである。けだしそれはその者の生命を狙うことの宣言と解されねばならぬからである。すなわち、私の同意なしに私を権力下に置こうと欲する者は、もし私を手に入れるならば、その欲するままに私を殺すであろう、と結論する理由が私にはあるからだ。(中略)自然状態において、この状態にある者がすべてもっている自由を奪い去ろうとするものは、必然的に、その他の一切のものを奪い去ろうと試みているのだと想像しないわけにはいかない。その自由はその他の一切のものの基礎であるからである。p.23