エーリッヒ・ケストナー飛ぶ教室飛ぶ教室 (講談社文庫)、同じくケストナー『エーミールと探偵たち』エーミールと探偵たち (岩波少年文庫 (018))。『エーミールと探偵たち』は、高橋源一郎の『一億三千万人のための小説教室』一億三千万人のための小説教室 (岩波新書 新赤版 (786))で、小説が始まるときの全てがここに!くらいのいきおいで取り上げられていて、それで今日、読んでみて、どうも印象が違うなと思ったら、翻訳が違っていた。『小説教室』で引用されていたのは、高橋健二訳、買ったのは池田香代子訳。一人称が私/ぼく、地の文が「です・ます」かどうか、とぱっと見でもけっこう差がある。
 どっちがいいかは、両方とも通して読んでいない、というより高橋訳は孫引き、なので分からない。でも、思いつきや記憶の喩えである「ぶたれた犬」(高橋訳)が、池田訳では「いじめつけられた犬」となっていて、これは「ぶたれた犬」のほうがいいと思う(『小説教室』で「ぶたれた犬」という表現を先に読んで、しかもけっこうキーワード的に使われていた、というのもあるけど)。