違いの分からない男

 短期バイトで、テストドライバーをした。といっても、本当の車ではなくて、ゲームセンターのレースゲームのような、ドライビングシミュレーターに乗った。ただし、車体は本物の車で、その周囲、ちょうど運転席からの視界全体をスクリーンが覆っていて、そこにCGが映し出される、という仕組み。
 内容は、要はすこし条件を変えたコースを交互に走って、どちらが走りやすかったか、を述べるというもの。
 ここで問題なのは、被験者であるぼくが違いの分からない男だ、ということだ。缶コーヒーの味の違いが分からない。もしかしたら、コカ・コーラペプシの違いも。
 眼鏡を作ったときだって、「どっちの色が濃くみえますか?」とか「どの印が一番濃いですか?」という質問に、ことごとく答えられず、店員さんと「こっちが濃いはずなんですけど…」、「ああ、そういえば、そうですね!」的なやりとりに終始してしまった。
 今回も自分のそんな不甲斐なさを感じながら、その場しのぎで「こっちの方がカーブ曲がりやすかったかと…」とやってきました。
 あと、似たようなものに「進歩しない男」があって、これは、ボーリングの一投目から十投目まで、さらには一ゲーム目から二ゲーム目まで、ちっともスコアが上昇しないときに感じます。