見えない都市

見えない都市 (河出文庫)

見えない都市 (河出文庫)

文庫で200ページちょいと、それほど厚いわけではないのに、長い、延々と続くような気になる、というところがすごい。

しかしこの都の特徴は、日足も短くなってゆく九月の夕べ、揚物屋の門先にいっせいに色とりどりの燈がともり、露台の上から女の、やれ、やれと叫ぶ声がする頃おいにこの都市にやってまいりますと、これと同様の夕暮を前にも過したことがあったしあの頃は幸福だったなどと考える御仁たちが羨ましいという気を、ふと起こさせることなのでございます。

と、この調子でずっと続く。思わずどんな特徴だよ、とつっこみたくなりつつも、そういう光景がイメージできるような、そんな気持ちが分かるような気にさえなってくるのが驚異的。